合同会社 柴田人事労務オフィス
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福利厚生・資産形成

最終報酬月額が低いと役員退職金はどうなる?

最終報酬月額が低いと役員退職金はどうなる?

役員退職金の算定において、実務で広く使われる功績倍率法は、最終報酬月額を計算の土台に置きます。月額が下がれば、算出される退職金も小さくなります。

ただし、最終報酬月額が在職期間の貢献を反映していない場合は話が変わります。国税不服審判所は昭和61年9月1日の裁決で、功績倍率法による算定は妥当でないと判断しました。

代わりに使われるのが1年当たり平均額法です。同業で規模の近い法人の支給実績をもとに、在任1年あたりの平均額から算出する方法です。

本記事では、功績倍率法のしくみと使えない場合の判断、1年当たり平均額法を図解で整理します。さらに裁決から見る分かれ目と、報酬を下げる前の備えまで紹介します。

最終報酬月額が低いと役員退職金はどうなるか

最終報酬月額が低いと役員退職金はどうなるか

最終報酬月額が低いと、役員退職金の計算結果も小さくなります。実務で広く使われる功績倍率法が、最終報酬月額を計算の土台に置いているためです。金額が縮むだけでなく、税務上の争点にもなりやすい論点です。

功績倍率法では支給額が小さくなる

功績倍率法を使う限り、最終報酬月額が低いほど算出額は小さくなります。功績倍率法は「最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率」で計算するためです。功績倍率とは、退職金が最終報酬月額と在任年数の積の何倍にあたるかを示す数値をいいます。月額100万円が30万円に下がれば、他の条件が同じなら算出額は3割前後まで縮みます。

国税不服審判所は昭和61年9月1日の裁決で、最終報酬月額が在職期間の貢献を適正に反映せず低額な場合、功績倍率法による算定は妥当でないと判断しました。

出典:国税庁「過大役員給与の損金不算入額算定に関する一考察―役員退職給与を中心に―」

報酬が0円でも退職金を出せるのか

最終報酬月額が0円でも、退職金の支給そのものが否定されるわけではありません。国税不服審判所は令和5年12月14日の裁決で、法人税法第34条は損金算入を制限する規定にすぎないと述べています。支給が役員の職務執行と功労への対価である点までは否定しないという判断です。

同条第2項は、役員給与のうち不相当に高額な部分を損金不算入と定めています。ただし功績倍率法では計算の土台が0円となり、算出額も0円になります。無報酬の期間がある場合は、別の算定根拠を税理士と検討してください。

出典:国税不服審判所「(令和5年12月14日裁決)」

争点になりやすい3つの場面

報酬を下げた理由は、税務調査で説明を求められやすい部分です。法人税法施行令第70条第2号が、業務に従事した期間や退職の事情、同種同規模法人の支給状況を過大性の判断要素に挙げているためです。報酬を下げた事情そのものが「退職の事情」として検討の対象になります。争点になりやすい代表的な場面を、起きやすいことと注意点に分けて整理します。

場面起きやすいこと注意点
病気や高齢で退任前に報酬を下げていた最終報酬月額が在任期間の貢献と離れる減額の時期と理由がわかる社内資料を残す
事業承継の準備で報酬を抑えていた後継者へ報酬を移し、自身の月額が下がる抑えていた期間の職務内容を確認される場合がある
M&Aの直前に報酬を変えていた譲渡条件と退職金の額が連動して見える変更の経緯を契約書や社内記録で示せるようにする

出典:e-Gov法令検索「法人税法施行令」

功績倍率法のしくみ

功績倍率法のしくみ

役員退職金の適正額は、功績倍率法という計算方法で見積もるのが実務の主流です。最終報酬月額・役員在任年数・功績倍率の3つを掛け合わせます。ただし計算式そのものは、法人税法の条文に書かれた算定ルールではありません。

計算式は3つの要素でできている

役員退職金は、最終報酬月額に役員在任年数と功績倍率を掛けて算定します。最終報酬月額は、役員を辞任または退任する直前の役員報酬の月額です。

役員在任年数は、役員として会社の業務に従事した期間を指します。功績倍率は、社長や専務といった職責の重さを数値に置き換えた倍率です。法人税基本通達9-2-27の3の注書きも、退職の直前に支給した給与の額を基礎とし、業務に従事した期間と職責に応じた倍率を乗じる方法と説明しています。3つの要素の意味と、算定するときの注意点を表に整理します。

要素内容注意点
最終報酬月額辞任または退任する直前の役員報酬の月額在任中の平均額ではなく、直前の月額を用いる
役員在任年数役員として会社の業務に従事した期間実質的に経営へ従事していた期間を通算する場合がある
功績倍率職責の重さを数値に置き換えた倍率法令にも通達にも具体的な数値の定めがない

出典:国税庁「法人税基本通達 第7款 退職給与」

功績倍率の水準はどう決まるか

功績倍率の数値には、法令にも通達にも定めがありません。法人税法施行令70条2号は、業務に従事した期間や退職の事情、同業類似法人の支給状況を判断材料に挙げるにとどまります。倍率そのものは条文に登場しません。

「社長は3.0倍」という水準にも条文上の根拠はありません。平成19年11月15日裁決では、裁判例で3.3〜3.6倍が定着しているという請求人の主張が退けられました。同事案で用いられた平均功績倍率は1.9倍です。個別の事情を離れた一律の目安は成り立ちません。

出典:国税不服審判所「平成19年11月15日裁決(裁決事例集No.74)」

平均功績倍率法と最高功績倍率法

平均功績倍率法は、同業類似法人の功績倍率の平均値を用いる算定方法です。平均を取れば、法人ごとの個別事情や特殊性が薄まります。東京高裁平成25年7月18日判決は、類似法人の抽出が合理的に行われる限り、法の趣旨に最も合致する合理的な方法だと判示しました。

最高功績倍率法は、類似法人のうち最も高い倍率を用いる方法です。同判決によれば、平均功績倍率法によるのが不相当な特段の事情がある場合に限って採用すべきとされます。抽出できた類似法人の件数がごく少ない場合などが当たります。

出典:e-Gov法令検索「法人税法」

功績倍率法が使えない場合

功績倍率法が使えない場合

功績倍率法は、最終報酬月額が在職期間中の功績を反映している前提で成り立つ計算方法です。前提が崩れれば、計算結果は適正額とはいえません。国税不服審判所も、最終報酬月額が低額なときは別の算定方法が合理的だと判断しています。

最終報酬月額が「著しく低い」と判断される場合

最終報酬月額が在職期間を通じた会社への貢献を適正に反映していない場合が該当します。国税不服審判所は昭和61年9月1日の裁決で、貢献を反映しない特段の事情があり低額なときは、最終報酬月額を基礎とする功績倍率法は妥当でないと判断しました。

想定される事情は主に3つです。病気による長期療養、高齢を理由とした報酬の大幅な引き下げ、事業承継の準備で無報酬に近い水準へ変更した場合です。退職直前の一時的な減額でも、下げ幅が大きければ判断の対象になります。引き下げた時期と理由を説明できるかが分かれ目です。

出典:国税不服審判所「役員退職給与(公表裁決事例要旨)」

報酬が0円のときの考え方

報酬が0円の場合、功績倍率法そのものが使えません。最終報酬月額に勤続年数と功績倍率を掛ける計算式のため、出発点が0円なら答えも0円になるからです。

そこで実務では、最終報酬月額を使わない「1年当たり平均額法」による算定が検討されます。国税庁の税務大学校が公開する研究論文でも、最終月額報酬が極めて低額な場合に、この方法の採用が挙げられています。無報酬の期間があるからといって、退職金を出せなくなるわけではありません。算定の土台となる考え方が入れ替わる点を押さえておきましょう。

何をもって「著しく低い」とするか

法令にも通達にも、明確な数値基準は置かれていません。法人税法施行令第70条第2号が挙げる判断要素は3点です。業務に従事した期間、退職の事情、同種で事業規模が類似する法人の支給状況です。何割下がれば低額という線引きはありません。実際の判断では、次の材料を組み合わせて検討されます。

判断材料具体的に見られる点
在任期間中の報酬の推移いつから、どの程度下げたか
報酬を下げた理由病気・高齢・事業承継など説明できる事情があるか
業務に従事した期間役員としての在任年数
退職の事情勇退や死亡など、退職に至った経緯
同規模法人の水準同業で事業規模が近い法人の支給状況

同じ減額幅でも、理由の説明しだいで結論は変わります。支給を決める前に、顧問税理士へ確認しておくと安心です。

出典:国税庁「法人税基本通達 第6款 過大な役員給与の額」

1年当たり平均額法とは

1年当たり平均額法とは

1年当たり平均額法は、同業種で規模の近い法人の役員退職給与を基に適正額を求める方法です。在任1年あたりの平均額に勤続年数を掛けて算出します。最終報酬月額を使わない点が特徴で、仕組みと限界を順に見ていきます。

最終報酬月額を使わない算定方法

1年当たり平均額法は、同業類似法人の役員退職給与の1年当たり平均額に、退職する役員の勤続年数を掛けて適正額を算出します。同業類似法人とは、同じ業種で事業規模が近い法人を指します。

国税庁税務大学校の論叢は、この1年当たり平均額を「役員退職給与の支給金額を勤続年数で除したもの」と説明しています。計算式は「1年当たり平均額 × 勤続年数」で表せます。

最終報酬月額が計算に入らないため、報酬を大幅に下げた場合や無報酬の場合でも金額を求められます。同論叢も、最終月額報酬が極めて低額な場合に採用が検討されるとしています。

類似法人をどう抽出するか

類似法人の抽出は、課税庁が地域・業種・事業規模・役職などの条件を組み合わせて行います。国税不服審判所は令和5年12月14日裁決で、次の基準による抽出に合理性を認めました。

  • 対象法人と同じ国税局管内に納税地がある法人
  • 日本標準産業分類の中分類が一致する法人
  • 一定期間内に役員退職給与を支給した法人(死亡退職分を除く)
  • 売上3年平均額が、対象法人の10分の1から10倍の範囲に収まる法人
  • 退職した役員の役職が同じである法人

同裁決は、単年度の売上高より3事業年度の平均値で比べるほうが、事業規模を適切に反映すると述べています。

1年当たり平均額法の限界

この方法の課題は、納税者が計算に必要なデータを持てない点にあります。税務大学校論叢は、納税者側が同業類似法人の各種情報を課税庁と同じ水準で入手するのは困難で、予測可能性の観点から問題があるとの意見を紹介しています。

裁判例では、納税者の予測可能性が一定程度制限されてもやむを得ないと判断されました。自社で事前に適正額を正確に試算するのは難しく、公表統計から傾向をつかむ対応にとどまります。功績倍率法との違いを、計算の基礎と検討される場面で比べると次のとおりです。

項目功績倍率法1年当たり平均額法
計算の基礎最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率同業類似法人の1年当たり平均額 × 勤続年数
最終報酬月額計算に使う計算に使わない
実務での位置づけ課税実務と裁判例で定着補完的に用いられる
検討される場面通常のケース最終報酬月額が極めて低額なケース
類似法人のデータ必要必要

昭和61年9月1日裁決は、最終報酬月額が在職期間中の貢献を適正に反映せず低額なときは、1年当たり平均額法がより合理的だとしました。どちらを採るかは事案ごとに判断されます。

出典:国税庁「税務大学校論叢第111号 本文」

裁決から見る判断の分かれ目

裁決から見る判断の分かれ目

最終報酬月額が低い場合の扱いは、国税不服審判所の裁決に手がかりがあります。争点はいずれも過大役員退職給与の算定方法です。1年当たり平均額法を相当とした裁決と、功績倍率法を維持した裁決を読み比べると、判断の分かれ目が見えてきます。

1年当たり平均額法が相当とされた事例

最終報酬月額が役員の貢献を反映していないときは、1年当たり平均額法のほうが合理的だと判断した裁決があります。昭和61年9月1日裁決(裁決事例集No.32・231頁)です。

原処分庁は、1年当たり平均額法は最終報酬月額を考慮しないため功績倍率法より合理性を欠くと主張しました。国税不服審判所は原処分庁の主張を退けています。最終報酬月額が在職期間を通じた会社への貢献を適正に反映せず、特段の事情があって低額であるときは、功績倍率法による算定は妥当でないと示されました。

出典:国税不服審判所「公表裁決事例要旨 役員退職給与」

功績倍率法が維持された事例

比較法人の平均功績倍率が裁判例より低いという理由だけでは、相当性を欠かないと判断した裁決があります。平成19年11月15日裁決(裁決事例集No.74・146頁)です。

請求人は、功績倍率3.3〜3.6倍が裁判例や裁決例で定着していると主張しました。国税不服審判所は、資金繰りの事情で低い倍率を用いた1社を比較法人から除き、残る3社の平均功績倍率1.9を採用しています。創業以来の代表取締役という名目ではなく会社への実際の貢献度を見るべきだとしたうえで、貢献度の高さを裏付ける事情は認められないと判断しました。

判断を分けた事情

判断を分けたのは、最終報酬月額がその役員の職務内容や貢献を反映していたかどうかです。昭和61年の裁決は反映していない特段の事情を認め、平成19年の裁決では反映の有無が争われていません。

平均功績倍率法は、比較法人の抽出が合理的であれば法の趣旨に最も合致する方法だと裁判例で示されています。1年当たり平均額法は例外です。報酬を引き下げた経緯や、引き下げ後の職務の実態を示せるかが分かれ目になります。2つの裁決を、争点と結論で並べます。

裁決争点結論
昭和61年9月1日裁決適正額を功績倍率法と1年当たり平均額法のどちらで算出するか最終報酬月額が貢献を反映せず低額なら、1年当たり平均額法が合理的
平成19年11月15日裁決比較法人の平均功績倍率1.9が低すぎないか裁判例より低いだけでは相当性を欠かず、功績倍率法を維持

裁決は個別の事案への判断で、同種の事案で同じ結論になるとは限りません。

最終報酬月額が低くなる前に備える

最終報酬月額が低くなる前に備える

最終報酬月額が下がってから慌てないよう、報酬を下げる前に手を打っておくと安心です。備えは大きく3つあります。役員退職慰労金規程の整備、報酬減額の理由の記録、支給資金の準備です。それぞれ順に説明します。

役員退職慰労金規程を整えておく

役員退職慰労金規程の作成は、法令上の義務ではありません。ただし算定方法を先に定めておくと、支給額の根拠を示しやすくなります。会社法第361条は、取締役の報酬や賞与など職務執行の対価を、定款か株主総会の決議で定めると規定しています。退職慰労金もこの報酬等にあたると解されています。規程に盛り込む項目は、次の4点が基本です。

  • 対象となる役員の範囲
  • 退職金の算定方法
  • 功労加算の有無と上限
  • 支給時期と支払方法

功績倍率法だけを定めていると、最終報酬月額が下がった場合に少ない額しか算定できません。在任期間に応じた定額など、別の算定方法もあわせて定める考え方があります。ただし規程どおりに支給すれば税務上認められるわけではない点に注意が必要です。

出典:デジタル庁「e-Gov法令検索 会社法」

報酬を下げる前に記録を残す

報酬を下げるときは、下げた理由を社内の記録に残しておきます。法人税法施行令第70条第2号は、役員退職給与が過大かどうかを判断する要素として「その退職の事情」を挙げています。業務に従事した期間や、同業同規模の法人の支給状況とあわせた判断です。報酬が下がった経緯は、退職の事情を説明する材料になります。記録に残したい理由の例は次のとおりです。

  • 療養や体調不良で職務量を減らした
  • 事業承継の準備として後継者へ権限を移した
  • 業績悪化に対応して役員報酬を見直した

取締役会の記録や社内の稟議書に、日付とあわせて残しておくと後から説明しやすくなります。

支給に備えた資金の準備

役員退職金は一度に多額の資金が出ていきます。支給時期から逆算し、数年かけて原資を積み上げる形が現実的です。中小企業基盤整備機構の経営セーフティ共済は、掛金を月額5,000円から20万円まで選べ、法人は掛金を損金に算入できます。掛金の納付が40か月以上あれば、解約手当金として掛金全額が戻ります。

ただし本来の目的は取引先の倒産に備える制度です。小規模企業共済は経営者個人の積立で、会社が支払う退職金とは別枠になります。代表的な備えを整理します。

備え内容注意点
経営セーフティ共済月5,000円〜20万円の掛金を法人が損金算入。40か月以上納めれば解約手当金として掛金全額が戻る制度の目的は取引先の倒産への備え。納付12か月未満での解約は掛け捨て
小規模企業共済月1,000円〜7万円を役員個人が積み立てる。掛金は全額所得控除、一括受取は退職所得扱い受け取るのは役員個人。会社が支払う退職金の原資にはならない
社内での資金留保・生命保険支給予定額から逆算して現預金を確保する、または保険で準備する保険は契約形態で税務上の扱いが変わる。加入前に税理士と設計を詰める

生命保険を使う方法もありますが、経理処理は契約内容によって変わります。商品を選ぶ前に、顧問税理士と設計を詰めておくと安全です。

出典:中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済 制度の概要」/中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 制度の概要」

最終報酬月額と役員退職金に関するよくある質問

最終報酬月額と役員退職金に関するよくある質問

最終報酬月額が低い場合の役員退職金は、金額の決め方や税務上の扱いで迷いやすい論点です。ここでは中小企業の経営者と顧問税理士から寄せられる質問を4つ取り上げ、法令や裁決で確認できる範囲の答えをまとめます。

Q. 退任の直前に役員報酬を上げても問題ありませんか?

退職金を増やす目的だけの引き上げは、税務調査で指摘を受けやすくなります。役員給与は法人税法第34条により、定期同額給与など決められた形に当てはまるものだけが損金になります。期の途中の増額には、職制上の地位の変更といった臨時改定事由が必要です。

さらに、増額後の月額が職務の対価として相当かどうかも見られます。金額を動かす前に、引き上げの理由を職務内容の変化で説明できるか確かめてください。

出典:国税庁「No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)」/国税庁「法人税基本通達 第3款 定期同額給与」

Q. 最終報酬月額ではなく在任中の平均報酬で計算できますか?

最終報酬月額を使わない算定方法が認められた裁決例はあります。国税不服審判所の昭和61年9月1日裁決は、1年当たり平均額法での算定を合理的と認めました。1年当たり平均額法とは、最終報酬月額を基礎とせず、同業で規模の近い会社の支給実績から金額を求める方法です。

最終報酬月額が在職期間を通じた貢献を適正に反映しておらず、金額が低いという特段の事情がある場合の判断でした。原則は功績倍率法であり、平均額法を使うには低額となった事情の説明が求められます。

Q. 功労加算金を上乗せしてもよいですか?

上乗せ自体は可能ですが、加算した後の総額で相当性が判断されます。法人税法施行令第70条第2号は、退職給与の額が業務に従事した期間や退職の事情、同業で規模の近い会社の支給状況に照らして相当かで判定すると定めます。加算割合を30%以内とする目安が語られることもありますが、法令にも通達にも根拠はありません。

法人税基本通達9-2-27の3も功績倍率法を説明するだけで、加算の枠は示していません。上乗せするなら、根拠となる実績を社内で説明できる状態にしておくと安心です。

Q. 過大と判断されるとどうなりますか?

不相当に高額と判断された部分は損金に算入されず、会社の法人税の負担が増えます。法人税法第34条第2項は、役員給与のうち不相当に高額な部分を損金の額に算入しないと定めています。支給そのものが無効になるわけではなく、税務上の経費として認められない扱いです。

申告後の調査で指摘を受けて修正すれば、追加の法人税に加えて延滞税などの負担も生じます。線引きは会社ごとの事情で変わるため、支給前に顧問税理士へ相談しておくと判断を誤りません。

出典:国税庁「No.9205 延滞税について」

下げる前に、記録と規程を整えよう

功績倍率法は最終報酬月額を計算の土台に置くため、月額が下がれば算出額も小さくなります。報酬が0円なら、計算結果も0円です。

最終報酬月額が在職期間の貢献を反映していない特段の事情があるときは、1年当たり平均額法による算定が合理的とされた裁決があります。ただし類似法人のデータは課税庁が持つため、自社で事前に試算するのは容易ではありません。

報酬を下げるなら、下げた理由と時期を社内の記録に残してください。役員退職慰労金規程の整備と資金の準備も、顧問税理士と進めておきましょう。

当オフィスでは、役員退職慰労金規程の整備や報酬設計の相談、退職金の算定方法まわりの実務支援をしています。「最終報酬月額が下がる前に備えたい」という段階からお気軽にご相談ください。

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