「同じ1億円でも、役員報酬で受け取るか退職金で受け取るかで手取りが変わる」。退職所得に3つの税制優遇があるためです。
退職所得控除、控除後の2分の1課税、他の所得と合算しない分離課税。3つが重なり、課税の対象が小さく収まります。
ただし役員には例外があります。役員としての在任期間が5年以下だと、2分の1課税が使えません。4年11か月は5年に切り上げられるため、就任日と退職日の確認が欠かせません。
会社側にも義務があります。支払った月の翌月10日までに源泉徴収した税額を納め、退職後1か月以内に源泉徴収票を交付する義務があります。
本記事では、税金の全体像と3つの優遇、税額を計算する4つの手順を図解で整理します。さらに具体的な金額での手取り試算と、会社側の手続きまで紹介します。
役員退職金にかかる税金の全体像
役員退職金の税金は、会社側と本人側の2つに分かれます。会社側の論点は支給額を損金に算入できるかどうか、本人側の論点は退職所得としていくら課税されるかです。まず両者を切り分けて全体像をつかみましょう。
会社と本人の両方で税金の扱いが変わる
役員退職金は、支払う会社と受け取る本人の双方で税金の問題が生じます。会社側の論点は法人税の計算です。役員に支給する給与のうち不相当に高額な部分は、損金に算入されません(法人税法第34条第2項)。退職給与も同じ扱いになります。
一方、本人側は受け取った退職金が退職所得となり、所得税と住民税の対象です。両者は別の税目で、判断の基準もそれぞれ異なります。会社と本人で、かかる税金と押さえる論点がどう違うかを表にまとめました。
| 立場 | かかる税金 | 押さえる論点 |
|---|---|---|
| 会社(支払う側) | 法人税 | 支給額を損金に算入できるか。不相当に高額な部分は損金不算入 |
| 本人(受け取る側) | 所得税・復興特別所得税・住民税 | 退職所得として、他の所得と分けて課税される |
| 会社(納税の手続き) | 預かった所得税・住民税 | 支払時に源泉徴収し、翌月10日までに納める |
出典:デジタル庁「e-Gov法令検索 法人税法」
本人にかかるのは所得税と住民税
役員退職金を受け取った本人には、所得税と復興特別所得税、住民税がかかります。退職所得は、給与などの他の所得と合算せずに計算する分離課税です。所得税法第22条は、退職所得金額を総所得金額とは別の課税標準と定めています。
住民税も同じ扱いで、地方税法第328条により他の所得と区分して課税されます。復興特別所得税は、東日本大震災の復興財源にあてるための税です。所得税額に2.1%を乗じた額が上乗せされます。
出典:デジタル庁「e-Gov法令検索 所得税法」
会社は源泉徴収して納付する
退職金を支払う会社は、支払いの際に所得税を徴収し、徴収した日の属する月の翌月10日までに国へ納めます(所得税法第199条)。住民税も同じ期限で、市町村への納入が求められます(地方税法第328条の5第2項)。
源泉徴収する税額は、本人から「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けているかどうかで変わります。提出がない場合の徴収税額は、支給額に一律20.42%を乗じた額です。申告書は、退職金を受け取る人が会社へ提出する書類を指します。
出典:デジタル庁「e-Gov法令検索 地方税法」
退職所得が優遇される3つの仕組み
役員退職金の手取りが多く残る理由は、退職所得に3つの税制上の仕組みが用意されている点にあります。勤続年数に応じた控除、控除後の2分の1課税、他の所得と合算しない分離課税の3つです。順に中身を見ていきます。
①勤続年数に応じた退職所得控除
退職所得には、勤続年数が長いほど大きくなる退職所得控除があります。勤続20年以下は1年あたり40万円、20年を超える部分は1年あたり70万円が積み上がる仕組みです。計算結果が80万円に満たない場合は80万円となります。
勤続年数に1年未満の端数があるときは、1年に切り上げます。障害者になったことが直接の原因で退職した場合は、さらに100万円が加算されます。勤続年数ごとの計算式は次の表のとおりです。
| 勤続年数(=A) | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × A(80万円に満たない場合は80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(A − 20年) |
勤続30年の役員であれば、控除額は1,500万円になります。
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
②控除後の2分の1だけが課税される
退職所得の金額は、収入金額から退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1です。所得税法第30条第2項が計算方法を定めています。収入金額とは、源泉徴収される前の支給総額を指します。
給与所得や事業所得は原則として全額が課税の対象になりますが、退職所得は控除後の半分だけが対象です。長年の勤務に報い、退職後の生活を支える資金という性格が考慮されているためです。
出典:国税庁「No.2732 退職手当等に対する源泉徴収」
③ほかの所得と合算しない分離課税
退職所得は、給与や不動産所得などの総所得金額とは別枠で税額を計算します。所得税法第22条と第89条が、退職所得の税額を他の所得と区分して計算すると定めているためです。
役員報酬や配当を同じ年に受け取っても、退職金が加わって役員報酬側の税率が上がる事態は起きません。超過累進税率(所得が増えるほど税率が上がる仕組み)の影響を受けにくい点が、実務上の利点です。
同じ金額を役員報酬として受け取る場合と比べ、控除・2分の1・分離の3つが重なる分だけ課税対象が小さく収まります。
税額を計算する4つの手順
役員退職金の税額は、4つの段階を順にたどれば算出できます。退職所得控除額の計算から始まり、課税退職所得金額の算出を経て、税率の確認と所得税額の計算へ進みます。全体の流れは次のとおりです。
- 勤続年数をもとに退職所得控除額を計算する
- 課税退職所得金額を計算する
- 速算表で税率と控除額を確認する
- 税率をかけて所得税額を計算する
手順1・2 退職所得控除額と課税退職所得金額を出す
手順1では、勤続年数をもとに退職所得控除額を求めます。勤続期間に1年未満の端数があるときは、1年に切り上げて数えます。勤続10年2か月なら11年として計算します。手順2で使う式は次のとおりです。
(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2 = 課税退職所得金額
収入金額は、源泉徴収される前の支給総額を指します。算出した額に1,000円未満の端数があるときは切り捨てます。ここで出た金額が、税率をかける土台になります。
手順3・4 税率をかけて所得税額を確定させる
手順3では、課税退職所得金額に対応する税率と控除額を速算表で確認します。税率は5%から45%までの7段階に分かれています。
| 課税退職所得金額(A) | 税率(B) | 控除額(C) |
|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 0円 |
| 195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
| 330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
| 695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
| 900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
手順4では、確認した税率と控除額を次の式に当てはめます。
(課税退職所得金額 × 税率 − 控除額)× 102.1% = 所得税および復興特別所得税の額
102.1%の内訳は、所得税の100%と復興特別所得税の2.1%です。復興特別所得税は、平成25年から令和19年(2037年)までの各年分に課されます。算出した税額に1円未満の端数が出たときは切り捨てます。
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率」
住民税は一律10%で計算する
退職所得にかかる住民税の税率は、金額の大きさにかかわらず一律10%です。内訳は市町村民税が6%、道府県民税が4%となっています。
住民税額は、課税退職所得金額に10%をかけて算出します。所得税のような速算表や控除額はありません。市町村民税額と道府県民税額に100円未満の端数が出た場合は、それぞれ切り捨てます。課税する市町村は、退職手当等の支払を受けるべき日が属する年の1月1日時点の住所地です。
出典:総務省「個人住民税」
役員在任5年以下は2分の1課税が使えない
役員としての在任期間が5年以下の場合、退職所得を2分の1にする計算が使えません。同じ支給額でも手取りが大きく変わる分岐点になります。対象となる人の範囲と勤続年数の数え方を、国税庁の基準に沿って確認します。
特定役員退職手当等とは
特定役員退職手当等とは、役員等としての勤続年数が5年以下の人が、その期間に対応して受け取る退職手当等を指します。国税庁は、退職所得の計算で残額を2分の1とする措置がないと明記しています。
対象となる「役員等」の範囲は3つに分かれます。1つ目は法人の取締役・執行役・会計参与・監査役・理事・監事・清算人と、法人の経営に従事する一定の人です。2つ目は国会議員と地方公共団体の議会の議員、3つ目は国家公務員と地方公務員です。一般の退職金との違いを整理すると、下の表のとおりになります。
| 区分 | 対象 | 2分の1課税 |
|---|---|---|
| 一般退職手当等 | 特定役員退職手当等・短期退職手当等のどちらにも当たらない退職手当等 | 適用あり |
| 特定役員退職手当等 | 役員等勤続年数が5年以下の人が、その年数に対応して受け取る退職手当等 | 適用なし |
出典:国税庁「No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(特定役員退職手当等)」
勤続年数の数え方と端数の扱い
役員等勤続年数は、役員等として勤務した期間の年数で数え、1年未満の端数を1年に切り上げます。切り上げた後の年数で5年以下かどうかが決まるため、就任日と退職日の確認が欠かせません。
国税庁は具体例を示しています。役員等勤続期間が4年11か月なら役員等勤続年数は5年となり、特定役員退職手当等に当たります。5年1か月であれば6年となり、当たりません。なお役員等以外の人で勤続5年以下の場合は、短期退職手当等という別区分の扱いになります。
使用人期間と重複する場合の計算
使用人として勤めた後に役員へ就任した場合、退職金は2つに分けて計算します。役員期間に対応する部分は2分の1計算を使わず、使用人期間に対応する部分は2分の1計算を使います。
退職所得控除額も分割し、役員部分に充てる金額を特定役員退職所得控除額と呼びます。重複する年数がなければ40万円に役員としての年数を掛け、重複する部分は20万円で計算します。使用人兼務役員の期間は重複年数に当たるため、判定に迷えば税理士へ確認しましょう。
出典:国税庁「No.2741 同じ年に一般退職手当等のほか、短期退職手当等や特定役員退職手当等がある場合」
具体的な金額で手取りを試算する
役員退職金の税額は、退職金の額と役員在任年数で大きく変わります。ここでは3,000万円・在任30年と5,000万円・在任20年の2つのケースについて、国税庁の速算表にもとづく計算過程を1円単位で示します。
ケース1 退職金3,000万円・在任30年
退職金3,000万円を在任30年で受け取る場合、税額の合計は1,861,869円、手取りは28,138,131円です。退職金に対する負担率は約6.2%です。
1,500万円の退職所得控除額と2分の1課税が働くため、負担が軽くなります。在任年数が20年を超えるので、退職所得控除額は800万円に70万円×超過年数を加えて求めます。計算の流れは次のとおりです。
- 退職所得控除額:800万円+70万円×(30年−20年)=1,500万円
- 課税退職所得金額:(3,000万円−1,500万円)×1/2=750万円(1,000円未満は切捨て)
- 所得税額:7,500,000円×23%−636,000円=1,089,000円
- 復興特別所得税:1,089,000円×2.1%=22,869円(1円未満は切捨て)
- 住民税:市町村民税450,000円(6%)+道府県民税300,000円(4%)=750,000円
- 税額合計:1,089,000円+22,869円+750,000円=1,861,869円
- 手取り額:30,000,000円−1,861,869円=28,138,131円
出典:国税庁「別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表」
ケース2 退職金5,000万円・在任20年
退職金5,000万円を在任20年で受け取る場合、税額の合計は7,821,684円、手取りは42,178,316円です。退職金に対する負担率は約15.6%で、ケース1の2倍以上に上がります。
在任年数が20年以下のため、退職所得控除額は40万円×在任年数で計算します。課税退職所得金額が1,800万円を超え、所得税の税率は40%の区分です。計算の流れは次のとおりです。
- 退職所得控除額:40万円×20年=800万円
- 課税退職所得金額:(5,000万円−800万円)×1/2=2,100万円(1,000円未満は切捨て)
- 所得税額:21,000,000円×40%−2,796,000円=5,604,000円
- 復興特別所得税:5,604,000円×2.1%=117,684円(1円未満は切捨て)
- 住民税:市町村民税1,260,000円(6%)+道府県民税840,000円(4%)=2,100,000円
- 税額合計:5,604,000円+117,684円+2,100,000円=7,821,684円
- 手取り額:50,000,000円−7,821,684円=42,178,316円
2つのケースを並べると、在任年数の差が控除額と税額に与える影響がわかります。
| 項目 | ケース1 | ケース2 |
|---|---|---|
| 退職金の額 | 3,000万円 | 5,000万円 |
| 役員在任年数 | 30年 | 20年 |
| 退職所得控除額 | 1,500万円 | 800万円 |
| 課税退職所得金額 | 750万円 | 2,100万円 |
| 所得税率 | 23% | 40% |
| 所得税額 | 1,089,000円 | 5,604,000円 |
| 復興特別所得税 | 22,869円 | 117,684円 |
| 住民税(10%) | 750,000円 | 2,100,000円 |
| 税額合計 | 1,861,869円 | 7,821,684円 |
| 手取り額 | 28,138,131円 | 42,178,316円 |
| 退職金に対する負担率 | 約6.2% | 約15.6% |
2つの試算は概算です。住民税の均等割や他の所得控除、自治体ごとの超過課税は反映していません。実際の税額は顧問税理士に確認してください。
出典:総務省「平成25年1月1日以降の退職所得に対する住民税の特別徴収について」
役員報酬で受け取る場合との違い
同じ金額でも、役員報酬より役員退職金のほうが税負担は軽くなるのが一般的です。退職所得に分離課税と2分の1課税という2つの仕組みが働くためです。
分離課税とは、他の所得と合算せずに単独で税額を計算する方式を指します。役員報酬は給与所得となり、他の所得と合算した金額に高い税率が適用されます。加えて社会保険料の負担も生じる点が違いです。
一方の退職所得は、控除後の金額を半分にしたうえで税率を掛ける仕組みです。ただし実際の差額は、他の所得や在任年数によって変わります。自社の数字での比較は、顧問税理士に依頼してください。
出典:国税庁「No.1400 給与所得」
会社側の税務と支払い時の手続き
役員退職金は、支払う会社側にも損金算入の時期の判定と源泉徴収の義務が生じます。手順を誤ると損金算入が認められなかったり、納付や提出が期限に間に合わなかったりします。会社が行う実務を、期限とあわせて確認します。
損金に算入する時期
役員退職金を損金に算入する時期は、原則として株主総会の決議等で金額が具体的に確定した日の属する事業年度です。ただし、実際に支払った事業年度に損金経理をした場合は、その事業年度での損金算入も認められます。
注意したいのは、確定前の事業年度に取締役会で内定した額を未払金へ計上しても、その時点では損金に算入できない点です。決議の日と支払日が事業年度をまたぐ場合は、どちらの事業年度で計上するかを事前に決めておきます。
出典:国税庁「No.5208 役員の退職金の損金算入時期」
「退職所得の受給に関する申告書」を受け取る
会社は退職金を支払うときまでに、本人から「退職所得の受給に関する申告書」を受け取ります。この申告書の有無で、源泉徴収税額の計算方法が変わります。提出があれば退職所得控除を使った正規の計算となり、提出がなければ支給額の20.42パーセントを源泉徴収する扱いです。
受け取った申告書は会社が保管し、税務署長から特に提出を求められた場合を除いて税務署へ提出しません。オーナー経営者自身が受け取る場合も、書面を作成して残します。
出典:国税庁「A2-29 退職所得の受給に関する申告」
源泉徴収と納付、支払調書の提出
源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、支払った月の翌月10日までに納付します。給与の支給人員が常時10人未満で納期の特例を受けている会社は、半年分をまとめた納付も可能です。
あわせて「退職所得の源泉徴収票・特別徴収票」を作成し、退職後1か月以内に本人へ交付します。税務署への提出は、令和7年12月31日以前の支払分では法人の役員に限られていました。令和8年1月1日以後に支払う退職手当等は、支払ったすべての人が提出対象です。会社が行う手続きを時系列で整理すると、次のようになります。
| 時期 | やること | 提出先 |
|---|---|---|
| 株主総会の決議日 | 支給額の確定と損金算入時期の判定 | 社内処理 |
| 退職金の支払時まで | 「退職所得の受給に関する申告書」の受領・保管 | 社内で保管 |
| 退職金の支払時 | 所得税と復興特別所得税の源泉徴収 | 社内処理 |
| 支払った月の翌月10日まで | 源泉徴収した税額の納付 | 所轄税務署 |
| 退職後1か月以内 | 退職所得の源泉徴収票の交付 | 退職した本人 |
| 退職後1か月以内 | 退職所得の源泉徴収票の提出(翌年1月31日までの一括提出も可) | 所轄税務署 |
| 退職後1か月以内 | 特別徴収票の提出(令和8年1月1日以後の支払分は当分の間省略可) | 市区町村 |
出典:国税庁「No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」/国税庁「No.7421 退職所得の源泉徴収票の提出範囲と提出枚数等」
役員退職金の税金に関するよくある質問
役員退職金の税金は、支給の場面ごとに扱いが分かれます。ここでは確定申告の要否や社会保険料の扱いなど、経営者からの質問が多い4つの論点を取り上げます。回答は国税庁と日本年金機構の公表資料にもとづいて整理しています。
Q. 役員退職金を受け取ると確定申告は必要ですか?
「退職所得の受給に関する申告書」を会社へ提出していれば、原則として確定申告は不要です。会社が退職所得控除を踏まえた税額を計算し、源泉徴収の段階で課税関係が終わるためです。
申告書を出していない場合は、支給額の20.42パーセントが一律で源泉徴収されます。受給者本人が確定申告を行い、税額を精算します。医療費控除や寄附金控除を受けるために申告書を出すときは、退職所得の金額もあわせて記載します。役員退職金でも扱いは同じです。
Q. 役員退職金に社会保険料はかかりますか?
役員退職金に、健康保険料と厚生年金保険料はかかりません。日本年金機構の事例集では、退職手当を「労働の対償として受けるものでない」ものに分類しています。
保険料の対象となる報酬や賞与は、労働の対償として経常的かつ実質的に受けるものに限られます。ただし例外もあります。毎月の給与や賞与へ上乗せして前払いする退職手当は、経常収入として報酬等に該当する扱いです。通常の役員退職金は退任時に一括で支給されるため、保険料の対象外となります。
出典:日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」/日本年金機構「厚生年金保険の保険料」
Q. 死亡退職金の税金の扱いはどうなりますか?
死亡退職金は所得税ではなく、相続税の課税対象になります。死亡後3年以内に支給が確定したものが、みなし相続財産として扱われます。
相続人が受け取る場合は「500万円×法定相続人の数」までが非課税です。法定相続人の数は、相続を放棄した人も含めて数えます。相続人以外が受け取った分に、この非課税枠は使えません。
弔慰金は業務上の死亡なら普通給与の3年分、業務外なら半年分までが弔慰金として扱われます。超える部分は退職手当金等として、相続税の対象になります。
出典:国税庁「No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金」/国税庁「No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い」
Q. 退職金を分割で受け取ると税金は変わりますか?
受け取り方によって扱いは変わりますが、分割支給と年金形式は区別が必要です。資金繰りの都合で支給を数回に分ける分割支給は、退職所得のまま扱われます。国税庁の質疑応答事例では、総額から求めた源泉徴収税額を各回の支給額であん分します。
一方、過去の勤務により会社から支払われる年金は、公的年金等の雑所得になります。退職所得控除ではなく公的年金等控除を使うため、税負担は大きく変わります。判断に迷う場合は顧問税理士へ相談してください。
出典:国税庁「退職金を分割支給した場合の源泉徴収税額の計算」/国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
税額を試算してから、支給額を決めよう
役員退職金には、退職所得控除・2分の1課税・分離課税という3つの優遇があります。3つが重なるため、同じ金額を役員報酬で受け取るより税負担は軽くなります。
ただし役員在任5年以下は2分の1課税が使えません。4年11か月は5年に切り上げられるため、就任日と退職日を先に確認してください。
会社側は、支払った月の翌月10日までに源泉徴収した税額を納めます。支給額を決める前に、記事の手順で税額を試算し、顧問税理士に確認しておきましょう。
当オフィスでは、役員退職金の設計や税額試算、支給時の源泉徴収・届出まわりの実務支援をしています。「支給額を決める前に税額を確かめたい」という段階からお気軽にご相談ください。
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