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社内規程・コンプライアンス

ハラスメント防止規程の作り方|書くべき5項目を図解で整理

ハラスメント防止規程の作り方|書くべき5項目を図解で整理

ハラスメント防止の措置義務に、企業規模の例外はありません。従業員が9人の会社でも、方針の明確化と相談窓口の設置が求められます。

さらに2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が全事業主の義務になります。規程の見直しが要る改正です。

規程に書く項目は5つに整理できます。目的と適用範囲・ハラスメントの定義・禁止行為・相談および苦情への対応・懲戒と再発防止です。

本記事では、法律が求める措置と2026年10月の義務化、規程の記載項目を図解で整理します。さらに相談窓口の設け方、届出と周知の手順まで紹介します。

ハラスメント防止規程とは

ハラスメント防止規程とは

ハラスメント防止規程は、職場でのハラスメントを禁止する方針や違反時の対応を社内で定めた文書です。法律が事業主に義務づける措置を果たす手段になります。まずは規程の役割と、就業規則との関係を整理します。

事業主の方針を明文化した社内ルール

ハラスメント防止規程は、ハラスメントを禁止する方針や違反時の対応を社内で定めた文書です。主な中身は、禁止する行為の範囲と相談窓口、行為者への処分の三点です。

労働施策総合推進法は、事業主に雇用管理上の措置を義務づけています。厚生労働省の指針は、措置の一つとして方針の明確化と周知・啓発を挙げました。行為者へ厳正に対処する方針を、就業規則など服務規律を定めた文書に規定するよう求めています。

服務規律とは、社員が守るべき職場のルールを指します。防止規程は、指針が求める規定をまとめた文書にあたります。

出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

就業規則に入れるか別規程にするか

定め方は三通りあり、社内の規模や見直しの頻度で選びます。厚生労働省のマニュアルは、就業規則本文に禁止規定を置く方法を示しています。詳しく定めたい場合は、就業規則に委任の根拠規定を設け、別規程にまとめる方法が有効です。労使協定を結んで取り組む例もあります。

懲戒処分の根拠にするには、就業規則との連動が欠かせません。労働基準法第89条第9号は、制裁の定めを置く場合、その種類と程度を就業規則に記載するよう求めています。別規程だけに書いても、就業規則からの委任がなければ処分の根拠として弱くなります。三つの定め方の向き不向きを、次の表に整理しました。

定め方向いている会社注意点
就業規則に条文を設ける従業員数が少なく、規定を一本にまとめたい会社相談手順まで書き込むと条文が長くなる
就業規則に委任規定を置き別規程を作る相談窓口や調査手順まで細かく定めたい会社委任の根拠規定を就業規則側に置く必要がある
労使協定を締結する労働組合があり、労使で取り組みを進めたい会社懲戒の根拠には就業規則の定めが別途必要になる

なお、常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が義務です。

出典:厚生労働省「パワーハラスメント対策導入マニュアル(第4版)」

規程がない場合に起きること

規程がない状態は、三つの不利益につながります。一つ目は行政の対応です。厚生労働大臣は、措置義務に違反する事業主へ助言・指導・勧告を行えます。勧告に従わない場合、その旨を公表できると法律に定められています。

二つ目は懲戒の根拠不足です。禁止規定と懲戒事由がなければ、行為者を処分しても無効と争われる余地が残ります。

三つ目は対応の属人化で、担当者ごとに判断が変わり、申告後の処理が滞ります。記録が残らず、再発を防ぐ手立ても打てません。なお、措置義務違反そのものに罰金刑は設けられていません。

出典:e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」

法律が事業主に求める措置

法律が事業主に求める措置

ハラスメント防止規程の中身は、法律が事業主に義務づけた措置がそのまま土台になります。対象となるハラスメントと、講ずべき措置の柱を押さえるところから始めましょう。厚生労働省の指針にそって整理します。

対象になる4つのハラスメント

防止措置が法律で義務づけられたハラスメントは、次の4種類です。根拠となる法律はそれぞれ異なります。

  • パワーハラスメント:労働施策総合推進法
  • セクシュアルハラスメント:男女雇用機会均等法
  • 妊娠・出産等に関するハラスメント:男女雇用機会均等法
  • 育児・介護休業等に関するハラスメント:育児・介護休業法

パワーハラスメントの定義は、指針で3つの要素に整理されています。

  • 優越的な関係を背景とした言動
  • 業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの
  • 労働者の就業環境が害されるもの

3つをすべて満たす行為が該当します。客観的にみて業務上必要かつ相当な範囲の指示や指導は、パワーハラスメントにあたりません。

出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントに関する指針」

講ずべき措置は大きく4つ

厚生労働省の指針は、事業主が雇用管理上講ずべき措置を4つの柱で示しています。4種類のハラスメントに共通する枠組みです。柱ごとの中身を表にまとめました。

措置の柱具体的にやること
①方針の明確化と周知・啓発ハラスメントの内容と行ってはならない方針を定め、管理監督者を含む全労働者に周知する。行為者への懲戒規定を就業規則に定めて周知する
②相談体制の整備相談窓口をあらかじめ定めて労働者に知らせる。担当者が内容や状況に応じて適切に対応できるようにする
③事後の迅速かつ適切な対応事実関係を迅速かつ正確に確認する。被害者への配慮と行為者への措置を行い、再発防止に向けた措置を講じる
④併せて講ずべき措置相談者と行為者のプライバシーを守る。不利益な取扱いをしない方針を定めて周知する

企業規模や業種を問わず、すべての事業主が対象になります。

出典:北海道労働局「職場におけるハラスメントの防止のために」/厚生労働省「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

相談したことを理由に不利益な扱いをしない

相談を理由とする不利益な取扱いは、法律そのものが禁じています。労働施策総合推進法第30条の2第2項は、労働者が相談を行ったことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いを禁止しています。事業主の対応に協力して事実を述べた労働者も、同じように守られる仕組みです。

不利益な取扱いには、解雇のほか降格や減給、不利な配置転換なども含まれます。同じ趣旨の規定は男女雇用機会均等法や育児・介護休業法にも置かれています。規程では、この禁止を条文として明記し、労働者に伝える対応が求められます。

出典:厚生労働省「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」

2026年10月に義務化される2つの対策

2026年10月に義務化される2つの対策

2026年10月1日から、カスタマーハラスメント対策と求職者等へのセクシュアルハラスメント対策が、すべての事業主の義務になります。中小企業に猶予期間はありません。ハラスメント防止規程の見直しは、施行日までに終えておきたい作業です。2つの義務化の内容を、対象と施行時期、講ずべき措置で整理します。

義務化される対策対象施行時期事業主が講ずべき措置
カスタマーハラスメント対策顧客や取引の相手方、施設の利用者など、事業に関係を有する者からの言動2026年10月1日(全事業主)方針の明確化と周知、相談体制の整備、事後の迅速な対応、悪質な事案への対処方針と体制整備
求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策求人への応募者、採用活動の参加者、教育実習や看護実習を受ける者2026年10月1日(全事業主)方針の明確化と周知、求職活動等のルールの明確化、相談体制の整備、事後の迅速な対応

カスタマーハラスメント対策

カスタマーハラスメントとは、顧客等の言動が社会通念上許容される範囲を超え、労働者の就業環境を害するものです。要求の内容と手段のどちらか一方だけが許容範囲を超える場合も該当します。

「顧客等」には顧客や取引の相手方のほか、施設の利用者とその家族、近隣住民も含まれます。事業主に義務づけられる措置は、次の4つの柱で整理されています。

  • 方針の明確化と労働者への周知・啓発
  • 相談窓口の設置と担当者の体制整備
  • 事実確認や被害者への配慮など事後の対応
  • 特に悪質な事案への対処方針の策定

出典:厚生労働省「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」/厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策

求職者等に対するセクシュアルハラスメントは、労働者の性的な言動により求職活動等が阻害されるものを指します。改正男女雇用機会均等法にもとづく義務です。

保護される「求職者等」は、求人への応募者だけではありません。会社説明会やインターンシップの参加者、教育実習や看護実習を受ける学生も含まれます。就職活動中の学生も保護の対象です。措置としては、方針の明確化と労働者への周知が求められます。面談の時間や場所などの求職活動等のルールを明確にし、相談窓口とあわせて求職者等にも周知します。

出典:厚生労働省「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」

規程に追記しておく内容

規程に追記する中心は、カスタマーハラスメントの定義と対応の手順です。厚生労働省のQ&Aでは、既存の懲戒規定で対応できる場合、新たな規定を設けなくてもよいとされています。ただし方針の周知は義務のため、規程に明記しておくと運用しやすくなります。追記を検討したい項目は次のとおりです。

  • カスハラの定義と顧客等の範囲
  • 一人で対応させないなどの対応手順
  • 警告文の発出や出入り禁止など悪質事案への方針
  • 求職者等への対応方針と相談窓口の周知
  • 対応記録の残し方と社内での情報共有

出典:厚生労働省「ハラスメント防止措置義務規定等における解釈事項について」/山形労働局「カスタマーハラスメント対策等が義務化されます」

規程に書く5つの項目

規程に書く5つの項目

ハラスメント防止規程に盛り込む項目は、大きく5つに整理できます。内訳は①目的と適用範囲②ハラスメントの定義③禁止行為④相談および苦情への対応⑤懲戒と再発防止です。厚生労働省の規定例も、ほぼこの並びで条文が組まれています。5つの内容を表にまとめました。

項目書く内容押さえる点
①目的と適用範囲規程を定める目的と、適用する人の範囲就業規則の第何条に基づくかを明記する
②ハラスメントの定義パワハラ・セクハラ・妊娠出産等の定義厚生労働省の指針の表現に合わせる
③禁止行為してはならない言動類型ごとに具体例を並べる
④相談および苦情への対応相談窓口の設置と対応の手順窓口の責任者と報告先を決める
⑤懲戒と再発防止処分の根拠と、事案発生後の措置就業規則の懲戒規定と結び付ける

目的・適用範囲・定義

規程の冒頭に置くのは、目的・適用範囲・定義の3点です。目的の条文には、就業規則の第何条に基づく規程かを書き込みます。適用範囲は正社員に限らず、パート・契約社員・派遣労働者まで広げます。定義は厚生労働省の指針の表現に合わせるのが安全です。

パワーハラスメントは「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」の3要素をすべて満たす言動を指します。セクシュアルハラスメントは取引先や顧客も行為者になり得るため、社外からの言動の扱いまで決めておきましょう。

出典:群馬労働局「職場におけるハラスメントの防止に関する規定」

禁止行為を具体例で示す

禁止行為は、抽象的な文言だけでは判断に迷う場面が出ます。厚生労働省がパワーハラスメントの代表的な言動として示す6類型を、条文の柱に据えましょう。6類型は①身体的な攻撃②精神的な攻撃③人間関係からの切り離し④過大な要求⑤過小な要求⑥個の侵害です。殴打や足蹴り・人格を否定する言動・長期間の別室隔離など、類型ごとに例を書き添えます。

ただし6類型は限定列挙ではありません。厚生労働省も、事案の状況によって判断が異なる場合があると注記しています。例に当てはまらない言動も相談の対象に含める一文を添えると安心です。

出典:山形労働局「雇用環境・均等室 各種規定例ダウンロード」

懲戒と再発防止の定め

懲戒の条文は、就業規則の懲戒規定と連動させます。防止規程で新しい処分を作るのではなく、就業規則に定めたけん責・減給・出勤停止・懲戒解雇などを適用する旨を示す形が基本です。厚生労働省も、ハラスメントをした者が就業規則の懲戒規定の適用対象となる旨を明確化し、労働者へ周知するよう求めています。

再発防止は、事案が起きたあとに講じる措置として書き込みます。行為者への研修・配置転換・方針の再周知・原因の分析などが挙げられます。事実が確認できなかった場合も同じ措置を講じる点まで定めておくと、運用に迷いません。

出典:厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために」

相談窓口と事後対応の流れ

相談窓口と事後対応の流れ

相談窓口の設置と事後対応は、ハラスメント防止規程を実際に動かす部分です。厚生労働省の指針は、窓口をあらかじめ定めて労働者へ周知することと、事実確認から再発防止までの対応を事業主の義務としています。中小企業でも運用できる設計が求められます。

相談窓口をどう設けるか

相談窓口は、あらかじめ定めて労働者へ周知します。厚生労働省の指針が事業主の義務とした措置です。指針は、窓口を定めていると認められる例として次の3つを挙げています。

  • 相談に対応する担当者をあらかじめ定める
  • 相談に対応するための制度を設ける
  • 外部の機関に相談への対応を委託する

中小企業では、社内の担当者自身が当事者になる場面もあります。社内窓口と外部窓口を併用すると、相談先を失うリスクが下がります。厚生労働省の総合労働相談コーナーは全国378か所にあり、事業主も無料で利用できます。

出典:厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」

相談から解決までの5段階

相談を受けた後は、指針が示す事後対応の項目に沿って進めます。5つの段階に整理すると次のとおりです。

段階対応内容
1 相談の受付担当者が内容と状況を聞き取る
2 事実関係の確認相談者と行為者の双方から確認する
3 被害者への配慮関係改善の援助や配置転換を速やかに行う
4 行為者への措置就業規則に基づき懲戒などを行う
5 再発防止方針を改めて周知・啓発する

双方の主張に不一致があり事実の確認が十分にできない場合は、第三者からも聴取します。再発防止は、事実が確認できなかった場合も同様に講じます。

出典:厚生労働省「ハラスメント対策パンフレット」

プライバシーの保護と不利益取扱いの禁止

相談者と行為者などの情報は、当事者のプライバシーに属します。指針は、保護に必要な措置を講じたうえで、その旨を労働者へ周知するよう求めています。性的指向・性自認や病歴、不妊治療などの機微な個人情報も含まれます。

相談したことや事実確認への協力を理由とする不利益な取扱いは禁じられています。解雇などの不利益な取扱いをされない旨を規程に定め、労働者へ周知・啓発します。

記録は個人情報として扱い、閲覧できる範囲を限ります。指針に保存期間の定めはないため、社内規程で期間を決めておきます。

出典:厚生労働省「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和8年10月1日適用)」

作成したあとの届出と周知

作成したあとの届出と周知

ハラスメント防止規程は、作成しただけでは社内のルールとして機能しません。就業規則の一部として定めた場合、労働基準監督署への届出が要ります。従業員への周知も労働基準法で義務づけられています。定め方ごとの扱いを表にまとめました。

定め方労基署への届出周知の方法
就業規則の本則に条文を追加する就業規則の変更として届出が要る労働基準法第106条が定める3つの方法
就業規則とは別冊の規程として定める就業規則の一部にあたるため届出が要る労働基準法第106条が定める3つの方法
常時10人未満の事業場で規程を定める届出の義務はない法律上の義務はないが、指針が周知・啓発を求める

労働基準監督署への届出が要る場合

常時10人以上の労働者を使用する事業場は、労働基準監督署長への届出が要ります。労働基準法第89条が、就業規則の作成と変更に届出を義務づけているためです。ハラスメント防止規程を別冊にしても、就業規則の一部であれば届出の対象に含まれます。

届出の前には、過半数労働組合か、労働組合がない場合は過半数代表者の意見を聴く手続きが要ります(第90条)。聴いた意見を記した書面を届出に添付し、書面には労働者を代表する者の氏名を記載します(同法施行規則第49条第2項)。届出先は事業場ごとの所轄労働基準監督署長で、支店も個別に届け出ます。

出典:e-Gov法令検索「労働基準法」/石川労働局「就業規則作成・届出に関するFAQ」

従業員への周知の方法

周知の方法は、労働基準法第106条と同法施行規則第52条の2が3つ定めています。規程を作った事業場は、いずれかの方法で全従業員に知らせます。

  • 常時各作業場の見やすい場所へ掲示するか、備え付ける
  • 書面を労働者に交付する
  • 社内のパソコンなどのファイルに記録し、労働者が内容を常時確認できる機器を各作業場に設置する

掲示や配布だけでは、内容が読まれないまま終わる場合もあります。厚生労働省の指針は、研修や講習の実施も周知・啓発の取り組み例に挙げています。

出典:e-Gov法令検索「労働基準法施行規則」

定期的に見直す

見直しの時期は、法改正や社内の変化に合わせて決めます。決まった頻度の定めはありません。次の3つが、見直しを検討する場面です。

  • ハラスメント関連の法令や指針が改正されたとき
  • 相談が寄せられ、規程どおりに対応できなかったとき
  • 組織再編や在宅勤務の導入で、働き方が変わったとき

指針も、事案への対応後に方針を改めて周知・啓発するよう求めています。変更した規程は、その都度届け出て、あらためて周知します。届出はe-Gov電子申請にも対応しています。

出典:厚生労働省「労働基準法等の規定に基づく届出等の電子申請について」

ハラスメント防止規程に関するよくある質問

ハラスメント防止規程に関するよくある質問

ハラスメント防止規程を整備する場面では、対象となる従業員の範囲や罰則の有無で判断に迷う担当者が多く見られます。ここでは中小企業の人事・総務担当者から寄せられる質問を4つ取り上げ、法令の条文にもとづいて回答します。

Q. 従業員が10人未満の会社でも規程は必要ですか?

必要です。ハラスメント防止の措置義務に企業規模の例外はありません。パワーハラスメント防止措置は2020年6月1日に大企業へ、2022年4月1日から中小事業主にも義務づけられました。セクシュアルハラスメントや妊娠・出産等に関するハラスメントの措置義務も、規模を問わず全事業主が対象です。

就業規則の作成・届出義務は常時10人以上の労働者を使用する事業場が対象で(労働基準法第89条)、措置義務とは別の制度です。従業員が9人の会社でも措置義務は免除されません。相談窓口や対応手順を、文書として整えてください。

出典:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」

Q. パートや派遣社員も規程の対象になりますか?

対象になります。措置義務の「労働者」とは、事業主が雇用する全ての労働者です。厚生労働省の資料では、パートタイム労働者や契約社員などの非正規雇用労働者も含むと明記されています。雇用形態を理由に規程の適用範囲から外すことはできません。

派遣労働者の扱いは少し異なります。労働者派遣法第47条の4により、派遣先も派遣労働者を雇用する事業主とみなされ、措置義務の対象になります。派遣先の相談窓口でも派遣労働者の相談を受け付け、派遣元と連携して対応してください。

出典:青森労働局「職場のパワーハラスメント対策等について」/e-Gov法令検索「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」

Q. 規程に違反した従業員をすぐ解雇できますか?

すぐには解雇できません。懲戒処分の根拠になるのは、就業規則に定めた懲戒の事由と種類です。労働基準法第89条も、制裁の定めを置く場合は種類と程度の記載を求めています。規程に根拠のない処分は、後から効力を争われかねません。

労働契約法第15条は、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない懲戒を無効と定めています。事実確認や本人への弁明の機会を省いた処分は、無効と判断されるおそれがあります。処分の内容を決める前に、弁護士や社会保険労務士へ相談してください。

出典:e-Gov法令検索「労働契約法」

Q. 措置義務を果たさないと罰則はありますか?

刑事罰は科されません。ただし行政指導の対象にはなります。労働施策総合推進法第33条第1項は、厚生労働大臣による助言・指導・勧告を定めた規定です。勧告に従わなかった場合、同条第2項にもとづき違反の事実を公表される可能性があります。

報告徴収にも注意が必要です。同法第36条第1項は、措置義務の施行に必要な事項について厚生労働大臣が報告を求める権限を定めています。報告をせず、または虚偽の報告をした場合は、第41条により20万円以下の過料の対象になります。

2026年10月の改正に、規程を合わせよう

ハラスメント防止の措置義務に、企業規模の例外はありません。従業員が9人の会社でも、方針の明確化と相談窓口の設置が求められます。

2026年10月1日からは、カスタマーハラスメント対策と求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が全事業主の義務に加わります。

規程に書く項目は、目的と適用範囲・定義・禁止行為・相談対応・懲戒と再発防止の5つです。就業規則の一部として定めるなら、届出と周知の手続きも生じます。施行前に、規程と運用をあわせて見直しておきましょう。

当オフィスでは、ハラスメント防止規程の作成・見直しや相談窓口の設計、2026年10月の改正対応まで支援しています。「自社の規程が最新の法改正に対応しているか確認したい」という段階からお気軽にご相談ください。

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