合同会社 柴田人事労務オフィス
Shibata HR & Labor Office LLC.
人材定着・組織づくり

リベンジ退職とは?経営者が知るべき原因・損害・防ぎ方を解説

リベンジ退職とは?経営者が知るべき原因・損害・防ぎ方

リベンジ退職という言葉が、ニュースやSNSで広がっています。繁忙期の突然退職や引き継ぎ拒否、口コミサイトへの投稿など、企業が受ける損害は小さくありません。従業員数十名の会社では、一人の離職が経営を揺るがす事態にもなりかねません。

リベンジ退職は、原因を知り予兆を早くつかめば、日々の仕組みで十分に防げるのです。大切なのは、報復を個人の問題として片づけず、組織の課題として向き合う姿勢です。

本記事では、リベンジ退職が起きる原因と企業が受ける影響、予兆の見抜き方までを詳しく解説します。さらに、発生時の初動対応や損害賠償が認められた裁判例、今日から始められる予防策も紹介します。

リベンジ退職とは?通常の退職との違い

リベンジ退職とは?通常の退職との違い

リベンジ退職とは、会社への不満や恨みを動機に、報復の意思を示して辞める退職を指します。最低限の業務だけこなす静かな退職とは正反対で、意図的に損害を与える点が通常の退職と違います。突然の引き継ぎ拒否やデータ削除、SNS暴露が典型例です。

リベンジ退職の意味と特徴

リベンジ退職とは、会社への不満や恨みを晴らす目的で、意図的に迷惑をかけながら辞める退職です。通常の転職が新しい環境を求める前向きな行動なのに対し、リベンジ退職の根底には組織やマネジメントへの強い不信感があります。

ハラスメントや不当な評価、約束の反故などが引き金となり、報復の意思を行動で示す点が特徴です。英語圏で広がったrevenge quitting(報復退職)が由来で、日本では2024年末ごろからSNSを通じて急速に知られるようになりました。

出典:マイナビキャリアリサーチLab「リベンジ退職とは?職場への抗議としての退職行動、その法的な注意点を解説」

一般的な退職との違い

一般的な退職とリベンジ退職の違いは、会社に損害を与える意図があるかどうかです。通常の退職は円満な引き継ぎを前提に、次のキャリアへ進むための前向きな区切りです。

一方リベンジ退職は、不満の報復として意図的に業務の継続性を壊そうとします。たとえば繁忙期を狙った突然の申し出や、引き継ぎの放棄、口コミサイトへの投稿などが伴います。

同じ退職でも、静かに去るのではなく損害を残して去る点が決定的な違いです。

典型的な3つのパターン

リベンジ退職には、会社への損害の与え方で共通する型があります。代表的な3つのパターンは次のとおりです。

  • 繁忙期の突然退職・引き継ぎ拒否:最も忙しい時期を狙って辞め、重要な業務を伝えず現場を混乱させます。
  • 社内データの削除・持ち出し:共有ファイルや顧客情報を消去、または無断で外部へ持ち出します。
  • SNS・口コミサイトでの暴露:職場環境や上司の言動を公開し、事実でない悪評を書き込む例もあります。

リベンジ退職が起きる主な原因

リベンジ退職が起きる主な原因

リベンジ退職は、日頃の不満が限界を超えたときに起こります。厚生労働省の調査では、待遇や人間関係、労働環境への不満が離職理由の上位に並びます。ここでは経営者が見落としやすい3つの原因を整理します。

人事評価や待遇への不満

頑張っても評価や給与に反映されない状態は、報復を伴う退職の火種になります。厚生労働省の雇用動向調査でも、給料等収入への不満は個人的な離職理由の上位に並びます。

評価制度の基準が不透明なまま、成果が昇給や賞与へ届かないと、従業員は正当に扱われていないと感じます。同僚との差の理由を説明できない職場では、不公平感がとくに強まります。

この不満が積み重なると、静かな諦めが会社への反発へと変わります。

出典:厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概要」

ハラスメントと人間関係の悪化

ハラスメントや上司との関係悪化は、恨みを残して辞めるリベンジ退職の直接の引き金です。厚生労働省の令和5年度調査では、過去3年間にパワハラを受けた労働者が19.3%にのぼります。

被害を受けた人のうち3割超は「何もしなかった」と答え、不満を内に抱えたまま働き続けます。声を上げられない職場ほど、退職後の報復に転じやすくなります。

日頃の人間関係のひずみが、恨みの温床になります。

出典:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」

成長機会の不足と過酷な労働環境

学びや昇進の機会が乏しく、長時間労働が続く環境は、有望な人材ほど見切りをつけます。パーソル総合研究所の分析では、キャリア形成の停滞を理由に挙げる離職者が近年増えています。

令和5年の雇用動向調査でも、労働時間や休日への不満から辞めた女性が11.1%を占めます。成長を実感できないうえ疲弊が重なると、不満は静かに蓄積します。

行き場を失った不満が、報復を伴う退職の下地になります。

出典:厚生労働省「令和5年 雇用動向調査結果の概要」/パーソル総合研究所「日本の『離職理由』はどう変化したのか」

企業が受けるリベンジ退職の影響

企業が受けるリベンジ退職の影響

リベンジ退職は、辞めた1人にとどまらない損害を企業へもたらします。業務が停滞して連鎖退職を招き、採用や育成の費用がかさみます。口コミサイトやSNSでの悪評は、企業イメージや信用まで傷つけます。

業務の停滞と連鎖退職

リベンジ退職は、業務の停滞と連鎖退職という二重の打撃を招きます。担当者が突然抜けると残った従業員に仕事が集中し、一人あたりの負担が一気に増えるためです。

とくにエース社員や中堅が辞めると引き継ぎが追いつかず、納期の遅れや品質の低下が表面化します。負担に耐えかねた従業員が次々と辞める連鎖退職に発展すると、少人数では業務が回りません。残る従業員のモチベーション低下も重なり、売上の減少や顧客対応の遅れへ直結します。

採用・育成コストの増加

リベンジ退職は、採用と育成のコストを大きく押し上げます。リクルートの就職白書2020によると、中途採用の一人あたり平均採用コストは103.3万円で、新卒の93.6万円を上回ります。

この金額には求人媒体費や人材紹介会社への手数料が含まれます。入社後の研修費や戦力化までの育成コストも上乗せされ、数十名規模の会社では補充のたびに百万円を超える負担が発生しやすくなります。リベンジ退職が重なると、こうした費用が繰り返し発生し、経営を圧迫します。

出典:株式会社リクルート 就職みらい研究所「就職白書2020」

SNS・口コミによる企業イメージの低下

リベンジ退職は、SNSや口コミサイトを通じて企業イメージと信用を傷つけます。マイナビが2025年に公表した調査では、2024年の転職者の51.3%が前職についてSNSや口コミサイトへ投稿し、20代では61.4%に達しました。

中途採用担当者の65.9%が、自社に関するネガティブな投稿を見た経験を持ちます。求職者は応募前に口コミサイトを確認するため、悪評が拡散すると応募者が減り、信用の回復にも時間がかかります。一度広まった悪評は削除が難しく、企業イメージの低下が長期化します。

出典:マイナビキャリアリサーチLab「転職者のSNS発信と企業対応に関する実態調査」

見逃せないリベンジ退職の予兆

見逃せないリベンジ退職の予兆

リベンジ退職は突然に見えて、数か月前から兆候が表れます。日々の変化を早くつかめれば、対話の機会を作れます。ここではコミュニケーション、勤務態度、エンゲージメントスコアの3つの観点から、見分けやすいサインを整理します。

コミュニケーションの変化

最初に表れやすいサインは、日常の会話量の減少です。職場への不満を抱えた従業員は、周囲との接点を自ら減らす傾向があります。次の変化が見分ける手がかりになります。

  • 挨拶や雑談が目に見えて減る
  • 会議での発言や提案が少なくなる
  • 上司への報告や相談を避ける

業務連絡は続くため気づきにくいものの、雑談の減り方は比較的つかみやすい兆候です。

勤務態度や成果の変化

意欲の低下は、勤務態度や成果の変化として表れます。会社への関心が薄れると集中力が続かず、仕事の質にも影響が及びます。観察できるサインは次のとおりです。

  • 遅刻や早退、急な有給取得が増える
  • ミスや納期の遅れが目立つ
  • 改善提案や新しい仕事への意欲が減る

これまで丁寧だった従業員ほど、普段との差が際立ちます。日頃との違いに注目すると兆候をつかみやすくなります。

エンゲージメントスコアの低下

数値で兆候をつかむ手段が、エンゲージメントスコアの低下への注目です。エンゲージメントとは、従業員が会社へ抱く愛着や貢献意欲を指します。

ギャラップの2024年版調査では、仕事に熱意を持つ日本の社員は6%にとどまり、世界でも最低水準です。スコアが短期間で下がった従業員は、離職の意向を強めている場合があります。

パルスサーベイ(週1回程度の短い意識調査)を使うと、こうした変化を早く把握できます。

出典:Gallup「日本の従業員エンゲージメントはわずか6%、世界最低レベルに」

リベンジ退職を防ぐ方法

リベンジ退職を防ぐ方法

リベンジ退職は、日々の仕組みづくりで発生を抑えられます。公正な評価制度で処遇への納得感を高め、定期的な面談で不満を早期に把握し、退職時も丁寧に対応します。3つの取り組みを続けると、従業員の定着と円満な関係につながります。

公正で納得感のある評価制度づくり

公正で納得感のある評価制度は、リベンジ退職を防ぐ土台になります。評価基準があいまいだと従業員の不満が蓄積し、能力の高い人材ほど公正に評価する会社へ移りやすいためです。防ぐには次の点を整えます。

  • 評価基準を期初に全員へ開示する
  • 評価者を複数にして偏りを抑える
  • 結果は面談で理由まで説明する

基準と根拠を見える形にすると、処遇への納得感が高まり定着につながります。

定期的な面談で不満を早期に把握する

定期的な面談で不満を早期に把握すると、退職の決断に至る前に手を打てます。1on1(上司と部下が一対一で定期的に行う対話)では、表面化しにくい違和感や職場環境への不安を早い段階で拾えるためです。実施のポイントは次のとおりです。

  • 月1回など頻度を決めて継続する
  • 業務の詰めではなく本人の悩みを中心に聞く
  • 話をさえぎらず傾聴する姿勢を保つ

小さな不満のうちに対応すると、信頼が積み上がります。

円満退職を支えるオフボーディング

退職が決まった従業員にも、丁寧なオフボーディングで円満退職を支えます。オフボーディング(退職者への引き継ぎ支援や手続きを整える一連の対応)の質は、残る従業員の不安や会社の評判を左右するためです。取り組む内容は次のとおりです。

  • 引き継ぎ計画を早めに作り業務を可視化する
  • 退職手続きや必要な連絡を会社側が支援する
  • 感謝を伝える面談で本人の声を聞く

円満な退職者は、将来の再雇用や紹介につながる資産になります。

リベンジ退職が起きたときの対応

リベンジ退職が起きたときの対応

リベンジ退職が起きた後は、初動が損害の大きさを左右します。まず社内の記録を保全し、何が起きたかを冷静に確認します。悪質な事案では損害賠償が認められた裁判例もあり、早い段階で弁護士と連携する流れを押さえておきます。

証拠の保全と事実確認

退職直後はまず証拠の保全から着手します。感情的な対応より、事実に基づく記録が後の交渉や法的措置の土台になるためです。

メール・チャット・アクセスログ・貸与端末を現状のまま確保し、上書きや初期化を止めます。データ削除が疑われる場合は、外部業者によるデジタルフォレンジック調査(消去データの復元と痕跡の分析)で確認を進めます。

関係者からの聞き取りは記録に残し、時系列で整理します。誰がいつ何をしたかを客観的な資料でそろえると、無用な紛争を避けられます。

損害賠償が認められた裁判例

悪質なデータ削除や情報の持ち出しには、損害賠償が認められた裁判例があります。会社が負担した復旧費用や損害が賠償の対象と判断されました。代表的な例を整理します。

  • 退職者が共有サーバーの実験データ232フォルダを削除し、一審で約577万円の賠償が命じられた事例(日亜化学工業事件・徳島地裁令和7年1月16日判決)
  • 元従業員が顧客情報を持ち出して転職先で利用し、約1億4000万円の賠償が認められた事例(大阪地裁平成25年4月11日判決)

損害額の立証は容易ではありません。請求を見据えるなら、早期の証拠確保が欠かせません。

出典:裁判所「令和5年(ワ)第38号 損害賠償請求事件 判決」/咲くやこの花法律事務所「退職者による機密情報、顧客情報の持ち出しで会社が取るべき対応とは?」

弁護士など専門家との連携

対応に迷ったら、早い段階で労働問題に強い弁護士と連携します。感情ではなく法律と事実に基づく判断ができ、不要な紛争や対応ミスを避けられるためです。

弁護士は証拠の集め方や書面の作り方を助言し、損害賠償請求や就業規則に沿った法的措置(懲戒や訴訟など)の見通しを示します。データ削除など専門性の高い事案では、フォレンジック業者との橋渡しも担います。

初動段階で相談すれば、証拠の散逸を防ぎ、その後の選択肢を広く保てます。

リベンジ退職に関するよくある質問

リベンジ退職に関するよくある質問

リベンジ退職をめぐり、経営者から寄せられる質問をまとめました。損害賠償の可否や退職代行との違い、就業規則の効力など、判断に迷いやすい論点を弁護士や公的情報をもとに整理します。

Q. リベンジ退職で会社は損害賠償を請求できますか?

退職そのものへの損害賠償請求は、原則として認められません。従業員には退職の自由があり、辞める行為だけを違法とは扱えないためです。

ただし機密情報の持ち出しやSNSでの誹謗中傷が伴う場合は別です。不正競争防止法違反や名誉毀損として、損害賠償を請求できる余地があります。

出典:咲くやこの花法律事務所「退職後に損害賠償請求されたら」

Q. 退職代行を使った退職もリベンジ退職に含まれますか?

退職代行の利用だけでは、リベンジ退職には当たりません。退職代行は退職の意思を本人に代わって伝える中立的なサービスで、報復目的とは限らないためです。リベンジ退職は繁忙期の突然の退職や引き継ぎ拒否など、会社に損害を与える意図が伴う点で区別されます。

Q. リベンジ退職が起きやすい会社に特徴はありますか?

評価制度への不満やハラスメントの放置がある会社で起きやすい傾向があります。努力や成果が正当に評価されず、えこひいきが残る職場では従業員の不満が蓄積します。

パワハラなどが是正されない風土や、退職者への配慮を欠く対応も引き金になります。日頃の従業員との対話不足が背景にあります。

Q. 就業規則でリベンジ退職は防げるのでしょうか?

就業規則だけでリベンジ退職を防ぐのは難しいといえます。期間の定めのない雇用では、解約の申し入れから2週間の経過で契約が終了すると民法第627条が定めており、期間を過度に延ばす規定は無効になり得るためです。

就業規則は引き継ぎ手順の明確化に役立ちますが、根本の不満解消には評価制度や職場環境の見直しが欠かせません。

出典:e-Gov法令検索「民法 第627条」

リベンジ退職を防ぐ組織づくりを今日から始めよう

リベンジ退職は、会社への不満が報復へと変わり、業務の停滞や企業イメージの低下を招きます。その根には、人事評価への不満やハラスメント、成長機会の不足があります。

防ぐ鍵は、公正な評価制度と定期的な面談で不満を早期につかみ、退職時まで誠実に向き合う姿勢です。会話量や勤務態度の変化という予兆を見逃さず、気づいた今日から組織づくりを始めましょう。従業員が安心して働ける職場が、報復を生まない最大の備えになります。

当オフィスでは、公正な評価制度の設計や1on1の導入支援、就業規則の整備まで、リベンジ退職を防ぐ組織づくりをサポートしています。「不満を早くつかむ仕組みを作りたい」という段階からお気軽にご相談ください。

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