AI導入に使える公的な資金は、経済産業省・中小企業庁が中心の「補助金」と、厚生労働省が中心の「助成金」に分かれます。補助金は審査に通った事業者だけが受け取れ、助成金は要件を満たせば原則として受け取れます。
中心になるのは、2026年に旧IT導入補助金から名称を変えた「デジタル化・AI導入補助金」です。通常枠は補助率2分の1以内で、補助額は最大450万円まで用意されています。
ただし、どちらも取組が終わってから振り込まれる後払いです。導入費用はいったん全額を自社で立て替えます。交付決定より前に発注すると補助の対象外になるため、動く順番を間違えると1円も受け取れません。
本記事では、補助金と助成金の違いと使える制度の一覧、申請から入金までの流れを図解で詳しく解説します。さらにつまずきやすい点までを紹介します。
補助金と助成金は何が違うのか
AI導入に使える公的な資金支援は、補助金と助成金の2種類です。所管する省庁も財源も異なり、応募できる時期と受け取れる確実性が変わります。財源・採否・受付時期の3点で並べると、性格の違いがはっきりします。
| 比較する観点 | 補助金 | 助成金 |
|---|---|---|
| 主な所管と財源 | 経済産業省・中小企業庁など/国や自治体の予算 | 厚生労働省/事業主が負担する雇用保険二事業の保険料 |
| 受け取れるかどうか | 審査で採択された事業者だけが受け取れる | 要件を満たせば原則として受け取れる |
| 受付の時期 | 公募期間は1か月前後が一般的 | 公募期間はなく、取組の実施時期を基準に申請 |
補助金は採択されないと受け取れない
補助金は、審査を通過した事業者だけが受け取れる資金です。採択の件数や金額があらかじめ決まっており、申請しても不採択になる場合があります。所管は経済産業省や中小企業庁が中心で、国や自治体の予算が財源です。
公募期間は1か月前後と短いため、締切を過ぎれば次の公募まで待ちます。補助の有無や金額は、事前の審査と事後の検査によって決まります。不採択なら1円も入らないので、採択されなかった場合の資金計画も用意しておくと安心です。
出典:中小企業庁 ミラサポplus「補助金とは」/中小企業基盤整備機構「補助金・助成金の違いや補助金活用における注意点について教えてください。」
助成金は要件を満たせば受け取れる
助成金は、定められた要件を満たした事業主であれば原則として受け取れる資金です。厚生労働省が所管し、雇用の安定や人材育成に取り組む事業主を支援します。財源は事業主だけが負担する雇用保険二事業の保険料で、令和8年度の料率は賃金総額の1,000分の3.5です。
そのため雇用保険の適用事業所の事業主であるかどうかが、受給の前提になります。申請の期限も公募期間ではなく、取組を実施した時期を基準に定められています。採択の競争がない分、要件の読み込みと書類の整備が受給を左右します。
出典:厚生労働省「事業主の方のための雇用関係助成金」/厚生労働省「雇用保険料率について」
どちらも後払いで自己資金が先に要る
補助金と助成金は、どちらも取組の完了後に振り込まれる後払いが原則です。補助金は交付申請から交付決定へ進み、発注と支払い、実績報告を経て額が確定します。交付決定より前に発注した経費は、補助の対象外になる点に注意が必要です。
入金までは全額を自社で立て替えるので、事業費と同額の資金を先に用意しておきます。総額300万円で補助率が3分の1なら、まず300万円を支出し、後から100万円が入る流れです。受け取った補助金は原則として収入に計上するため、税負担も見込んで資金計画を立てます。
出典:中小企業庁 ミラサポplus「補助金入門 STEP3:補助の審査・交付・報告」/国税庁「No.2202 国庫補助金等を受け取ったとき」
デジタル化・AI導入補助金2026の中身
デジタル化・AI導入補助金2026は、中小企業がAIを含むITツールを導入する費用を国が支援する制度です。2026年に旧IT導入補助金から名称を変え、申請枠は5つに整理されました。枠ごとの補助率と対象経費を順に見ていきます。
旧IT導入補助金から名称と中身が変わった
2026年からIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」へ名称が変わりました。事業の正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業」です。中小企業庁は、デジタル化の推進とAI活用の重要性を広く周知するねらいだと説明しています。
変わったのは名前だけではありません。ITツール検索でAI機能を持つツールを絞り込めるようになり、AI搭載ツールにはその旨が明記されます。
過去にIT導入補助金の交付決定を受けた事業者には、賃上げに関する要件も加わりました。申請枠の数は前年度と同じ5つです。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026事務局「デジタル化・AI導入補助金2026の概要について」/中小企業庁「デジタル化・AI導入補助金2026 交付申請受付開始のお知らせ」
5つの申請枠と補助率・上限額
デジタル化・AI導入補助金2026には、5つの申請枠があります。導入するITツールの機能や目的によって、選べる枠と補助上限額が変わります。公募要領で公表されている補助率と上限額を表にまとめました。
| 申請枠 | 補助率 | 補助上限額 |
|---|---|---|
| 通常枠 | 1/2以内 | 5万円〜150万円未満(1プロセス以上)/150万円〜450万円以下(4プロセス以上) |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | ソフトウェア3/4以内(小規模事業者は4/5以内)/ハードウェア1/2以内 | ソフトウェア350万円まで/PC・タブレット等10万円まで/レジ・券売機等20万円まで |
| インボイス枠(電子取引類型) | 中小企業・小規模事業者等2/3以内/その他の事業者等1/2以内 | 350万円まで(下限なし) |
| セキュリティ対策推進枠 | 中小企業1/2以内/小規模事業者2/3以内 | 5万円〜150万円 |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 基盤導入経費はインボイス対応類型と同じ/消費動向等分析経費2/3以内 | 基盤導入経費と消費動向等分析経費の合計で3,000万円 |
※インボイス対応類型のソフトウェアは、補助額50万円を超える部分の補助率が2/3以内になります。
※通常枠は、低い賃金水準の従業員を一定割合雇用している場合に補助率が2/3以内へ引き上げられます。
通常枠は、補助を受けたい機能の数によって上限額が2段階に分かれます。インボイス枠の対象は、会計・受発注・決済の機能を持つソフトウェアです。パソコンやレジも補助の対象に入ります。
締切は年度内に複数回設けられます。確定した回のみ日程が公表されるため、最新の締切日は公式サイトで確認してください。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026事務局「インボイス枠(インボイス対応類型)」/中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「公募要領(セキュリティ対策推進枠)」
補助の対象になる事業者と対象外の経費
補助の対象は、日本国内で法人登記され国内で事業を営む中小企業・小規模事業者等です。業種ごとに資本金または従業員数の上限があり、どちらかを満たせば申請できます。製造業は資本金3億円以下または従業員300人以下、サービス業は5千万円以下または100人以下です。
一方で、補助対象にならない経費もあります。交付決定前に契約・発注したITツールの費用は対象外となり、あとから申請しても補助は受けられません。中古品や交通費・宿泊費、申請代行費、消費税も対象外です。発注は交付決定を受けてから行ってください。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026事務局「事業概要」
AI導入に使えるほかの補助金
AI導入に使える補助金は、デジタル化・AI導入補助金だけではありません。設備投資や省人化、新事業への進出など、目的に合わせて選べる国の制度が複数あります。ここでは4つの補助金を取り上げ、補助上限と使いどころを整理します。
ものづくり補助金は2026年度に統合された
ものづくり補助金は2026年度に新事業進出補助金と統合されました。現在は「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」の革新的新製品・サービス枠が後継にあたります。補助率は中小企業が1/2、小規模企業者が2/3です。補助上限は従業員1〜5人で750万円、51人以上で2,500万円です。賃上げ特例を満たせば最大3,500万円まで上がります。
経費区分には機械装置・システム構築費があり、計上が必須になります。AIを組み込んだ生産設備や、独自のAIシステム開発が対象になりえます。
出典:中小企業基盤整備機構「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 補助金概要」/中小企業庁 ミラサポplus「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金の第1回公募要領を公開」
中小企業省力化投資補助金は人手不足の解消に使う
中小企業省力化投資補助金には、カタログ注文型と一般型の2つがあります。カタログ注文型は登録済みの省力化製品から選ぶ方式で、補助率は1/2以下です。補助上限は従業員5人以下で200万円、21人以上で1,000万円となります。
一般型はオーダーメイドの設備やシステムが対象です。補助率は中小企業が1/2、小規模企業者が2/3で、上限は750万円から8,000万円です。機械装置・システム構築費が必須のため、AIによる自動化や省人化の投資に向きます。
出典:中小企業省力化投資補助金「カタログ注文型とは」/中小企業省力化投資補助金「一般型とは」
新事業進出枠と小規模事業者持続化補助金
新事業進出補助金も、統合後の新事業進出枠に引き継がれました。補助率は1/2です。補助上限は従業員1〜20人で2,500万円、101人以上で7,000万円です。AIを軸にした新規事業の立ち上げに向きます。
小規模事業者持続化補助金は販路開拓を支える制度で、補助率は2/3、補助上限は50万円です。少額のAIツール導入に使えますが、パソコンなど汎用性の高い機器は対象外です。インボイス特例と賃金引上げ特例を満たすと、上限は250万円まで増えます。
4つの制度は補助上限と得意分野が異なります。2026年度時点で公表されている条件を並べると、次のとおりです。
| 制度名 | 補助上限 | 補助率 | 向いている使い道 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・サービス枠(旧ものづくり補助金) | 750万〜2,500万円(賃上げ特例で最大3,500万円) | 1/2(小規模企業者は2/3) | AI搭載設備の導入、生産プロセスの改善 |
| 省力化投資補助金(カタログ注文型) | 200万〜1,000万円(大幅な賃上げで最大1,500万円) | 1/2以下 | カタログ掲載製品による省人化 |
| 省力化投資補助金(一般型) | 750万〜8,000万円(大幅な賃上げで最大1億円) | 1/2(小規模企業者は2/3) | オーダーメイドのAIシステムで省力化 |
| 新事業進出枠(旧新事業進出補助金) | 2,500万〜7,000万円(賃上げ特例で最大9,000万円) | 1/2 | AIを活用した新市場への進出 |
| 小規模事業者持続化補助金 | 50万円(特例併用で最大250万円) | 2/3(賃金引上げ特例の赤字事業者は3/4) | 少額のAIツールでの販路開拓 |
制度をまたぐ併用には制限があります。小規模事業者持続化補助金の公募要領は、同一の補助事業で国の他の補助金を重複して受け取れないと明記しています。省力化投資補助金の公募要領も、補助対象経費が他制度と重なる事業を対象外と定めています。
出典:小規模事業者持続化補助金事務局「<一般型 通常枠>第20回公募 公募要領(第8版)」/中小企業基盤整備機構 補助金活用ナビ「新事業進出・ものづくり補助金のご案内」
AI導入に関わる厚生労働省の助成金
厚生労働省の制度は、AIツールの購入費ではなく人材育成や賃上げを支える助成金が中心です。経済産業省系の補助金とは支援の狙いが異なります。中小企業が使いやすい2制度と、利用前に押さえたい注意点を整理します。
人材開発支援助成金はAIを使う人材の育成に使う
人材開発支援助成金は、従業員にAI関連の訓練を受けさせた際、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を助成する制度です。中でも事業展開等リスキリング支援コースは、社内のDX化(デジタル技術による業務の作り替え)に伴う訓練を対象としています。
中小企業の場合、経費助成率は75%、賃金助成は1人1時間あたり1,000円です。対象は10時間以上のOFF-JT(通常業務を離れて行う研修)に限られます。経費助成の限度額は1人1訓練あたり30万〜50万円で、訓練時間数によって変わります。なお同コースは令和8年度末までの時限措置です。
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」/厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内」
業務改善助成金は設備投資と賃上げをセットで行う場合に使う
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、生産性向上に向けた設備投資を行った中小企業・小規模事業者への助成制度です。助成額は最大600万円で、賃金の引上げ額と対象労働者数によって上限が決まります。
助成率は引上げ前の事業場内最低賃金が1,050円未満なら4/5、1,050円以上なら3/4です。対象経費の例には機器・設備の導入や経営コンサルティングが挙げられています。ただしパソコンやタブレットは原則として対象外で、物価高騰等の要件を満たす特例事業者だけ新規導入が認められます。
出典:厚生労働省「業務改善助成金」/厚生労働省「令和8年度業務改善助成金のご案内」
助成金は設備そのものへの補助ではない
厚生労働省の助成金は、AIツールの購入費そのものを直接まかなう制度ではありません。人材開発支援助成金は訓練経費と賃金が対象で、業務改善助成金は賃上げが支給の前提です。機器やソフトの費用を直接支援してほしい場合は、経済産業省系の補助金を軸に検討するほうが近道になります。
ただし人材開発支援助成金には、令和8年度に設備投資加算が新設されました。訓練で実際に使う機器の導入費用の50%を中小企業に加算する仕組みです。
3制度で対象になる費用と主な要件を、下表に整理します。
| 制度・コース | 主な助成対象 | 中小企業の助成率など | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| 人材開発支援助成金(人材育成支援コース) | 訓練経費・訓練期間中の賃金 | 経費45%/賃金800円(1人1時間) | 10時間以上のOFF-JT |
| 人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース) | 訓練経費・訓練期間中の賃金 | 経費75%/賃金1,000円(1人1時間) | 事業展開やDX化に伴う訓練 |
| 業務改善助成金 | 生産性向上に向けた設備投資等 | 助成率4/5または3/4(上限600万円) | 事業場内最低賃金を50円以上引上げ |
※人材育成支援コースの数値は正規雇用労働者の場合です。賃金要件などを満たすと経費60%・賃金1,000円に上がります。
助成率やコース内容は年度ごとに見直されます。申請前に厚生労働省の最新の支給要領を確認してください。
出典:厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)設備投資加算を新設しました」
申請から入金までの流れ
デジタル化・AI導入補助金は、申請すればすぐ入金される制度ではありません。事前準備から交付決定、実績報告を経て、ようやく補助金が振り込まれます。手順を取り違えると補助対象外になる場面もあるため、全体の流れを先に押さえておきましょう。
申請から入金までは、大きく9つのステップに分かれます。
| ステップ | 内容 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 1 | 公募要領の確認 | 枠ごとの要件を読む |
| 2 | GビズIDプライム取得/SECURITY ACTION宣言 | 交付申請の必須要件 |
| 3 | IT導入支援事業者・ITツールの選定 | 登録済みの中から選ぶ |
| 4 | 交付申請 | 支援事業者と共同で作成 |
| 5 | 交付決定 | ここまで発注・契約は不可 |
| 6 | 発注・契約・支払い | 交付決定の通知後に着手 |
| 7 | 事業実績報告 | 証憑をそろえて提出 |
| 8 | 補助金額の確定・承認 | マイページで確認後に入金 |
| 9 | 事業実施効果報告 | 定められた期限内に提出 |
申請前に必要な2つの準備
交付申請の前に、GビズIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言を済ませます。GビズIDプライムは、行政手続きで使う共通アカウントです。オンライン申請なら最短で即日発行され、書類を郵送する方法では不備がなくても最大1か月かかります。
SECURITY ACTIONは、情報セキュリティ対策への取り組みを自己宣言する制度です。補助金の事務局は「★一つ星」以上の宣言を要件としています。どちらも締切直前では間に合わない恐れがあるため、早めに着手すると安心です。
出典:GビズID「よくある質問」/デジタル化・AI導入補助金2026「申請を行う前に必要な手続き」
交付申請から交付決定までにすること
交付決定を受ける前に契約・発注・支払いを行うと、その費用は補助の対象外になります。まず選ぶのは、事務局に登録済みのIT導入支援事業者とITツールです。登録外の事業者やツールは選べないため、公式サイトの検索ページで確認します。
交付申請は、選んだIT導入支援事業者と共同で申請マイページから作成します。提出後は事務局が審査を行い、交付決定通知が届く流れです。締切から交付決定まで1か月以上あく回もあるため、導入時期には余裕を見込んでください。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026「ITツール・IT導入支援事業者検索」/デジタル化・AI導入補助金2026「事業スケジュール」
実績報告と効果報告まで終えて入金される
補助金が振り込まれるのは、ITツールを導入して実績を報告し、金額が確定した後です。交付決定通知を受け取ったら、ITツールの発注・契約・支払いに進みます。導入が終わったら証憑をそろえ、申請マイページから事業実績報告を出す流れです。
事務局の確定検査で補助金額が決まり、マイページで承認すると入金へ進みます。ただし入金で終わりではなく、事業実施効果報告の義務が数年にわたって残ります。申請から入金まで数か月かかるため、導入費用は自社で立て替える前提で資金繰りを組みましょう。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026「交付決定後に必要な手続き」
申請でつまずきやすい点
AI導入の補助金は、要件を一つ見落としただけで不採択や返還につながります。とくにつまずきやすいのは、交付決定前の発注と賃上げ目標の未達です。加点と減点の扱いも含め、公募要領で確認できる注意点を整理します。
交付決定前の契約・発注は対象外になる
交付決定の通知が届く前に契約や発注をした費用は、補助対象になりません。デジタル化・AI導入補助金2026では、事業実施期間より前や後に行った事業は認められないと定められています。
事業は契約・発注から始め、納品、請求・支払いまでの一連の手続きを事業実施期間内に終える必要があります。支払いをIT導入支援事業者からの請求より先に行う扱いも認められません。
見積書やカタログの取り寄せは事前に進められますが、注文を出す前に交付決定を確認する流れが安全です。申請から交付決定までは数か月かかるため、導入時期には余裕を見込みます。
出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「事業実施・実績報告マニュアル」
賃上げ目標が未達だと返還を求められる
賃上げ目標を掲げて採択された場合、目標に届かないと補助金の返還を求められます。中小企業省力化投資補助事業(一般型)では、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上が基本要件です。
事業計画終了時点で未達なら、達成率に応じた金額の返還が必要になります。年平均成長率が0以下の場合は全額返還です。
ただし付加価値額(営業利益と人件費、減価償却費の合計)が増えず赤字が続く場合など、事業者の責任に帰さない事情があれば返還は求められません。
出典:中小企業基盤整備機構「中小企業省力化投資補助事業(一般型)公募要領(第7回公募)」
加点項目と減点措置を確認しておく
加点と減点は採択の可否を左右するため、申請前に一覧で確認しておくと安心です。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠では、15項目の加点と5項目の減点措置が公募要領に明記されています。主な内容は下表のとおりです。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 加点 | クラウド製品・サイバーセキュリティお助け隊サービス・インボイス対応製品を選定している |
| 加点 | 賃金引上げ計画を策定し、従業員へ表明している |
| 加点 | 健康経営優良法人2026、えるぼし・くるみんなどの認定を受けている |
| 加点 | 「IT戦略ナビwith」「省力化ナビ」の活用、デジタル化セカンドオピニオンの実施 |
| 減点 | IT導入補助金2022〜2025で交付決定を受けている |
| 減点 | 過去に導入したソフトウェアとプロセスが重複する(完全一致は不採択) |
| 減点 | 賃金引上げ計画で加点を受けながら要件を達成できなかった |
加点を受けながら未達に終わると、効果報告で未達が報告されてから18か月間、中小企業庁が所管する補助金の審査で大幅に減点されます。実行できる水準の計画づくりが大切です。
出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(通常枠)」
AI導入の補助金・助成金に関するよくある質問
AI導入の補助金では、対象になる事業者や経費の線引きで迷う場面が多くあります。公募要領と国税庁の資料をもとに、個人事業主の可否・生成AIの利用料・パソコン等の購入費・税金の4点にお答えします。
Q. 個人事業主でも補助金を使えますか?
個人事業主も補助金の対象になります。デジタル化・AI導入補助金2026の申請対象者には、資本金・従業員規模の一方が基準以下であれば個人事業を含むと示されているためです。
業種ごとの規模要件は満たす必要があります。製造業・建設業・運輸業なら資本金3億円以下または従業員300人以下、卸売業なら1億円以下または100人以下が基準です。
申請にはGビズIDプライムアカウントが要ります。個人事業主の場合、本人確認書類や直近の納税証明書などを用意しましょう。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026事務局「申請枠・申請類型」
Q. 生成AIの月額利用料は補助の対象になりますか?
クラウド型サービスの月額利用料は、最大2年分まで補助の対象になります。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠では、補助対象がソフトウェア購入費とクラウド利用料、オプションと役務に定められているためです。
対象となるのは、IT導入支援事業者が取り扱い事務局に登録されたITツールだけです。自社で直接契約した汎用の生成AIサブスクリプションは対象外となります。
文書作成や表計算などの汎用ツールも、単独では申請できません。会計や受発注といった業務プロセス向けソフトとの組み合わせが条件です。
出典:デジタル化・AI導入補助金2026事務局「通常枠」
Q. パソコンやタブレットの購入費は対象になりますか?
通常枠ではパソコンやタブレットの購入費は対象外です。通常枠の補助対象経費が、ソフトウェア購入費とクラウド利用料、導入関連費に限られているためです。
一方、インボイス枠(インボイス対応類型)ではハードウェア関連費が対象になります。PC・タブレット等は補助上限10万円、レジ・券売機は補助上限20万円で、補助率はいずれも2分の1以内です。
対象は、会計・受発注・決済の機能を持つソフトとあわせて導入する機器に限られます。機器だけを単体で購入しても補助は受けられません。
出典:中小企業デジタル化・AI導入支援事業事務局「デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領(インボイス枠)」
Q. 受け取った補助金に税金はかかりますか?
補助金には原則として税金がかかります。法人なら益金、個人事業主なら事業所得の総収入金額に算入されるためです。
ただし固定資産の取得に充てた場合は、負担を和らげる仕組みがあります。法人には圧縮記帳、個人事業主には国庫補助金等の総収入金額不算入という制度が設けられています。
個人事業主が適用を受けるには、国庫補助金等の総収入金額不算入に関する明細書を添えた確定申告書の提出が要ります。どちらも課税の繰延べであり、税金が免除されるわけではありません。
出典:国税庁「法人税基本通達 国庫補助金等で取得した資産の圧縮記帳」
使う制度を1つ決めてから動こう
AI導入の資金は、まずデジタル化・AI導入補助金を軸に検討し、設備投資や新事業なら省力化投資補助金や新事業進出枠を比べます。人材育成が主目的なら厚生労働省の助成金が候補です。
最初にやるのはGビズIDプライムの取得とSECURITY ACTIONの宣言です。どちらも発行までに日数がかかり、締切直前では間に合いません。そのうえで、交付決定を受けるまで発注も契約もしないと社内で徹底してください。順番を守れるかどうかが、補助金を受け取れるかどうかを分けます。
当オフィスでは、中小企業のAI導入について、使える補助金の選定や申請の段取り、導入業務の選び方までをご支援しています。「補助金を使ってAIを入れたい」という段階からお気軽にご相談ください。
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